『服飾遊技』

お祭りはいつも、何処か日常とは、 少し違う別の世界の様な気がする。
人や街、普段は別々のピースが 何か一つに繋がっていく感じ。
だから、ボクはそんな楽しいお祭りが好きだった。

★ ★ ★

そよ吹く秋風が涼しくなってきた頃、童実野高校の遊戯達のクラスも、
もう直ぐ始まる文化祭の出し物の話題で持ちきりだった。
ある人は食いしん坊に食べ物が良いとか、 ある人はド派手なパフォーマンスが良いとか。
ワイワイがやがや、お祭り騒ぎの様な教室の中央では、クラス委員の杏子が、
テキパキと皆からのアンケート用紙を集計していた。
「それでは、文化祭の出し物は 多数決の結果により・・」
杏子は折られたメモを開きながら、 一票一票丁寧に黒板に記していく。
「『コスプレ喫茶』に、決定しました!!」
だが、そこで今回決まったのは 『意外な出し物』だった。
「やっり〜!!なら、今はコスプレっていったら、アレだよな!!」
それにいち早く反応したのは、 意外にも城之内くんだった。
「従順なメイドさんの濃厚ご奉仕サービスが売りの『メイド喫茶』だぜ♪」
そういうと、城之内くんは臆面も無く 微妙に間違った知識を披露していた。
――・・そういえば、城之内くん・・ 最近そういうAV見たって言ってたっけ・・
遊戯も半ば呆気に取られながら、 『親友』の動向を見守っていたが・・
「これでアキバ系からも、 ガッポリ儲けて――痛って!!」
全てを言い終わる前に、杏子が投げた黒板消しが城之内の顔面に見事クリーンヒットした。
「何すんだよ!!」
城之内くんは粉だらけの顔を払いながら、 杏子に向かって反論するけど・・
「却下!!」
またもみなまで言わさず、 綺麗に『却下』されていた。
「――ったくよ『流行り物』ってのは、 いち早く取り入れるもんだぜ!!」
城之内くんは意気揚揚と講演するけど、 今回は少しばかり分が悪い。
「城之内、もっともらしく言わない!!」
そういうと杏子は司会進行役として、
「大体、衣装代だってバカにならないでしょう。それとも城之内、アンタが出す?」
容赦無く正論で城之内を切り捨てていた。
「うわっ・・キッツ〜・・」
そんな苦虫を噛んだ様な城之内くんを尻目に、
一部の女子から色々なアイディアが出てきた。
例えば、喫茶の制服は学校の制服にエプロン姿で接客するとか。
『ゴールデンルール』という、正しいお茶の入れ方を出来る人が中心に
お茶入れをするとか、お茶菓子には、皆でクッキーやケーキを事前に手作りする等。
『流石は、女の子だなぁ〜』という、意見が沢山出てきていた。
でも中には、男子から見れば ギョッとする意見がサラリと出てきた。
「女子が接客してセクハラとかあったら嫌だなぁ〜」という女の子が居て。
「そうしたら、じゃあ私達は 男装してガードしちゃおうよ!!」と言い出し。
あまつさえ「なら、女子は男装、 男子は逆で女装したら面白いんじゃない♪」
――っと、何だかとんでもない意見まで出始めていた。

結果、ボクら男子には 民主主義的な権利も虚しく・・・
「女子は男子の制服を、 男子は女子の制服を借りて、接客って事で。」
女子の安全面を考慮&企画の意外性アピールの為にも、本案は可決に至ったりした。

男装のウェイター役やお茶菓子作り、お茶役の子達は、
軒並み意見の中心にいた女子陣営で難なくまとまり。
男子陣営はというと、一部家庭科が得意な人を除けば、
喫茶スペースの設営やビラ・チラシ宣伝などの裏方に人気が集中した。

そして、案の定・・
あぶれた男子達で『女装ウェイトレス』を 決めなければいけなくなって・・
――うぅ・・どうかコレだけは、 当たりません様に、当たりません様に!!
そう懸命に願って、 ボクは運命のクジをドローした。
「ええっ!?」
そこには、ハッキリと赤いボールペンで 『当たり』と書かれていた。
ボクにとっては、このクジの『当たり』は、 即ち『大はずれ』で・・

――ただ、ボクは、 お祭りは『参加者』で居たいと・・
――この時、心から想った・・

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以下、「続き」は『服飾遊技』本編をお楽しみ下さいませ♪
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