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遠い記憶

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ただ、貴方の側にさえいられれば、私はそれで幸せだったのです。

ファラオよ、貴方が生きてさえ下されば―――――




それは、遠い記憶。
記憶の彼方の、彼方。
毎日のように夢に見るのは、古代エジプトのような場所。
私は王に仕える侍女だった。
侍女といっても、戦いの訓練を受けた護衛のような物。
多少の”召喚”も出来る、近衛。

そして、王に身分違いの恋をした。

スグに反乱が起きて、私は王を守り死んでしまうのだけれども。




ファラオよ、貴方が生きてさえ下されば―――――




私が死ぬ所で、いつも目覚める。
その後王はどうなったのか分からない。
最後の記憶は遠のく意識のなかで王の真紅の瞳からこぼれ落ちる涙。

それが、私に対する物だったのかさえ分からないけど、
胸を締め付けるような悲しみと、身体を貫く数本の槍の痛み。
到底夢だとは思えないリアルさがあった。




そんな日々が何日か続いたけれど、それはきっと転校のせいだと思った。
父親の転勤で決まった転校。
友人達と別れる辛さと新しい学校への不安からだろう、と。

気にする事はない。
慣れてしまえばきっとそんな夢見なくなるさ、と。









そして、転校初日。

「初めまして、父の転勤により転校して来ました、と申します。
これからよろしくお願いしますね」

少し微笑んで、自己紹介をする。
すると窓からやわらかな風がふき、茶色の髪がふわりとゆれた。

その姿に、男子ほぼ全員がに釘付けになる。
城之内、本田、御伽、そして遊戯までもが。
遊戯については、現在は主人格の方である。




※ここよりしばし遊戯と闇遊戯の心の会話となります

「ねぇもう一人の僕ー、あの転校生の子かわいいよね〜」
「あ、あぁ……」
「あれ?どうしたの?もう一人の僕?」
「い、いや、なんでもないぜ相棒!」
「ねぇ…本当どうかしたの?」
「相棒…すまない、昼休みにちょっとかわってくれるか?」
「え?別にいいけど、本当にどうかしたの?」
「悪い…いまはちょっと」
「…?じゃぁ、お昼休みね」
(もう一人の僕…一人で抱え込まないといいんだけど…)




やっぱり……転校初日だからって無理して来たのは不味かったかな…?
自己紹介の時はまだマシだったのに、急に熱上がってきたみたい……。
昨日片付けがんばりすぎちゃったかもなぁ…。
”あの夢”のせいで寝不足っていうのもあるかも。
とにかくお昼休みになったら保健室の場所聞いて行って来よう。
それまでの我慢、我慢。


キーンコーンカーンコーン


「やっとお昼休み…早く保健室の場所……」


もう限界……39度位あるんじゃないかなぁ…?
今日はもう寝かせてもらうか早退かな。
とてもじゃないけどお弁当食べる気力さえない……。


と思ったのに…。


「ねぇ、さんって前はどこの学校にいたの?」

「なぁ、彼氏っているの?」

「あの城之内って奴と本田って奴は要注意よ〜」

「うわっ、なんだよ!杏子ひでぇな!チャン、今のウソだから!!!」

「城之内の奴は仕方ないにしてもなんで俺まで!」

「本田ぁ!お前まで!!!」

「あははは、お昼ご飯いっしょに食べない?」


色々聞きたくなる気持ちは分かるけど、お願いだから今だけは止めて……。

意識が遠のきそ―――……




「おい、お前大丈夫か?」




え…?誰……?
クラクラしてよく見えない……―――


バタッ




「おい!?大丈夫か!!?」
「えぇ!!?ちゃんどうしちゃったの?早く保健室!」
「よっしゃ、俺が連れてくぜ!」
「いい、城之内くん。俺が連れて行く」
「え?遊戯…でもよ、お前、抱きかかえられるのか?」
「う……」
「とにかく、早く先生に診せましょ!」




この想い、伝えられなくとも貴方さえ生きて下されば。

そうすれば、私は幸せなのです。

ファラオよ―――――




真紅の瞳の王。
四方に散らばる金と紅に髪。
真紅の瞳から流れ落ちた涙は、私の頬を伝い流れて行く。
遠のく意識の中で唇に触れたのは紛れもなく王の唇。
最後に王は言った。


「三千年の時を超え、必ずまた会おう」


その後王はどうなったのか。
やっぱりそれは分からないけど……
今日ほど王の顔がはっきり見えたのは初めてだ。
そして、王が流した涙の行く先を見たのも。

キスを、されたのも。


「ん……?」

「目は覚めたか?…さん」
「貴方は…?」


まだはっきりとしない視界。
その声の主を確かめようと、目をこする。

紅い瞳…金と…紅の四方に散らばる髪……?

首から下げられている逆ピラミッド型のペンダントには、見覚えがある。

王家に伝わる、謎のアイテム。

それらはあの夢に出てくる物とそっくりだ。

もしかして、夢に出てきた人と一緒……?


「俺は……武藤遊戯だ」
「武藤…君?あの…私……」
「昼休みに熱で倒れたんだぜ?無理すんなよな。」
「あの……貴方が運んでくれたんですか?」
「いや…俺じゃ運べなかったから城之内君が。保健の先生が言うには疲労だろうってよ。今日はもう帰っていいらしいぜ?」
「そう……」


「なぁ、お前って”前世”って信じるか?」


「え……?」
「”前世の記憶”とかさ」
「どういう意味…?」


「夢を、見るんだ。
古代エジプトの、ファラオだった夢を。
愛しい人を亡くす、夢を」


「それって……私……」


「お前は、見ないか?」


「私…も…見る。
古代エジプトで、ファラオの侍女…しているの」


「俺は……その侍女が好きだった」

「え…?」

「けれど、そいつは俺を守って死んでしまった。
だけど、約束したんだ。
”三千年の時を超えまた会おう”って……」
「私…は…ファラオが好きだった。
貴方と同じように、真紅の瞳のファラオが」
「俺は、お前と同じように綺麗な長い髪の侍女が好きだった」




遊戯は、の髪に指を絡め、引き寄せると先にキスをした。
それから唇に。




「もう一度、こうしたかったんだ―――――」




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<雪花様よりのコメント>

なんじゃこりゃ!と自分で自分にツッコミました。

>そんな事は無いと思うのですが?


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―― 感謝の言葉――

雪花様、素敵な「前世ファラオ」ドリーム有難う御座いました!!(至福)

ファラオ闇様って、静かな存在感と言うか「強さ」が格好良いですね〜・・
そして、ファラオを傍でお守りする「近衛兵ヒロイン」って良いなv(萌)
はぅ〜・・ラストが「ハッピーエンドなのも尚良し!!」でした♪(悦)

頂いたのが結構前でしたが、UPが遅くなってしまってスイマセン!!(汗)

それでは短いですが、これにて「感謝の言葉」とさせて頂きます。


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