【キミとはなしがしたいんだ】


学校からの帰り道、道端に一匹の黒い猫が居た。

「ニャー♪」
猫は相棒の方へ向き直ると機嫌の良さそうな鳴き声で呼び止めていた。
「ん、どうしたの?」
相棒はそんな見知らぬ黒猫に何故か興味を示すと……
「……にゃー?」
驚いた事に道端で『ニャー』と一声鳴いたのだ。
「ニャーン!」
ぎこちない相棒の猫マネ声に、何故だか猫も共鳴する様に返事をしていた。

しばらくの間『ニャーニャー』と、一人と一匹は互いに鳴きあっていた。

――ま、相棒も周りに人が居ないからやったのだろう……

程無くして、黒猫はひょいと塀を登ると何事も無かった様に去っていった。

「なんて言ってたんだ、相棒?」
猫の去った方向を見送るあいつに、今度はオレが声を掛けてみた。
「ん、ああ…」
あいつはオレの方を向くと少し照れ臭そうにはにかむと。
「いや、ボクも全然わかんないんだけど」
『わからない』という事を前に、相棒は素直に認めていた。
けれど、その瞳は何処か満足げで穏やかなモノだった。
「さっきの猫、なんだか一生懸命話し掛けてくれたみたいだからさ」
きっと『言葉』はわからなくても、互いの『気持ち』が届いたのだろう。
「ボクもちょっと話してみたいなって思って」
あいつはただ自分へ訴え掛ける声に耳を傾け『応えたかった』だけだった。
「フッ…お前らしいな」
ただ、目の前の『心』と向き合う、あいつの温かな大らかさは日向にも似ていた。

ああ、オレは……

こいつの『こういう所』が良いなと改めて思った。


――そんな、六月のある晴れた日の出来事だった。


>FIN


>BY・こはくもなか


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6月4日 武藤遊戯さんお誕生日おめでとう御座いますー♪



もう何度目のお誕生日お祝いでしょうかw
今年は余裕があってか遊戯さん小話が書けました★
こういう素朴で何気ない器の広さが遊戯さんの良い所かなっと思い書いてみました。
『遊戯って、本当良い奴だよな…』と思える、愛すべき小市民な遊戯さんが大好きだ★

2014.6.4 こはくもなか拝

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